『千葉市「街の不具合を報告するアプリ」で見えた! 地方自治体の“売れる知恵”とは』古賀茂明氏―週プレNEWS

F4lg03大企業が不況に苦しむ中、千葉市が共同開発したサービスに世界が注目している。

『週刊プレイボーイ』でコラム「古賀政経塾!!」を連載中の経済産業省元幹部官僚・古賀茂明氏は、日本の中小企業や地方自治体の知恵に日本再生の鍵があるという。

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前回のコラム(日本企業復活の鍵はある老舗旅館のケースに!)で“日本メーカー復活”のヒントをクラウドコンピューティングサービスの最大手「セールスフォース・ドットコム」の日本法人経営幹部に聞いた。

今回は同社が自治体や中小企業と組んで展開した、面白いビジネスの話をしたいと思う。

人口97万人の政令指定都市である千葉市は、道路の陥没や公園遊具の破損、街灯のランプ切れといった街中の不具合を正確に把握してスピーディに修繕する作業に苦労していた。

何しろ、市に届く修繕依頼の通報は年間1万5千件。そのほとんどが電話やメールなので、不具合地点の状況や位置を把握するだけでも大変な手間暇とコストがかかってしまうのだ。

そこで千葉市が思いついたのが、市民が見つけた街中の不具合のコメント付き映像をPCやスマホで送信してもらおうというアイデアだった。

市に届いた情報はクラウド上で一元管理され、マップとしてウェブに公開される。市はその可視化された情報を、

●「市役所が解決すべき課題」(道路の舗装やガードレールの破損修理など)

●「市民の力で解決できるもの」(公園の草刈り、ベンチの落書き消し)

などに分類し、市民や自治会と一緒に解決に当たる、という仕組みだ。

これによって、インフラ修繕のコスト削減につながり、なおかつ住民が自治体と協働でインフラ保全をするから市民のまちづくりへの意識が高まり、地方自治を深化させることができる。

このシステムを千葉市と一緒に開発したのが、セールスフォースだった。14年9月に運用をスタートさせるや他の自治体からの問い合わせが相次ぎ、わずか数ヵ月間で70以上の視察団が千葉市に押し寄せたという。

もうひとつ大きな成果を生んだ事例を紹介しよう。

ある小さなシステム会社が中小企業向けに労働時間管理のシステムを開発しようとした。しかし、開発費が巨額なので中小企業に売るだけでは利益が見込めない。

そこで、この会社はセールスフォースに協力を仰いだ。完成したシステムをセールスフォースのクラウドサービスとして販売し、より多くの企業に利用してもらえれば、開発費も十分にペイできるからだ。

しかも、このサービスを英語でも利用できる仕様にしたところ、世界中から利用申し込みがあり、予想を超えるヒット商品になったという。

日本企業の労働慣行は特殊だから世界に通用しない、という固定観念にとらわれていたら、こうした成果は得られなかっただろう。

前回のコラムで紹介した、日本の一旅館が開発したホテル宿泊管理システムと同じく、日本の中小企業や地方自治体の知恵には全国、さらには世界市場で 売れる商品となる可能性が秘められている。その価値に目を向け、世界標準に仕立て上げてセールスする。元気がない日本経済を成長させるカギは、そこにある と思う。

週プレNEWS(2016年5月9日)より

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