『武器輸出大国へと突き進む日本~4兆4000億円の巨額プロジェクトも検討中』古賀茂明氏―現代ビジネス

F4lg03安保法施行の陰でやっていた

3月29日、ついに、あの「安保法」が施行された。

昨夏から秋にかけて、人々はこの法案が憲法違反であることなどを理由に強い反対の声を上げ、国会前には数万人が押しかけた。この法律は、集団的自衛 権の行使を容認し、自衛隊の海外派遣も歯止めが不十分なまま拡大させるものだ。施行されたことで、その具体的危険性がさらに高まった。

しかし、安倍政権は、5月から6月に予定される南スーダンへの派遣部隊の交代に合わせて、自衛隊に駆けつけ警護などの新しい任務を与えることを「十 分な準備が必要」という理由で見送った。法案が施行されても何も変わらないかのように時が過ぎ、衆参の選挙が行われるまでには国民の間の危機感は薄れてい る。争点化を避け、選挙に勝つという安倍政権の戦略が見えてくる。むろん、選挙後には一気に自衛隊の海外派兵や任務拡大を大々的に進める腹である。

実は、安保法施行の陰で、我々が油断しているうちにもう一つ大変な事態が進んでいる。それは、武器輸出の問題だ。

憲法9条で戦争放棄をうたう日本は、他国への武器輸出を原則禁止してきたが、安倍政権はその国是を転換。’14年4月、閣議決定でそれまでの「武器 輸出三原則」をなくし、武器や軍事技術を海外に輸出できる「防衛装備移転三原則」に変えてしまった。それから2年。国民は、何も変わっていないと思ってい るかもしれない。

しかし、日本がいきなり武器輸出大国に躍り出るような話が進んでいて、もはや止めようもない段階になっている。

それは、オーストラリア政府との商談だ。12隻の潜水艦を共同開発・生産するパートナーとして、豪政府が日本の三菱重工を選び、「そうりゅう型」潜水艦を採用する可能性が高まっている。受注額は、設計、建造、メンテナンスを含めて4兆4000億円。「超巨大案件」だ。

天下り利権も拡大する

防衛装備移転三原則の閣議決定当時、「輸出するのは、救難飛行艇や軍用救急車など、人命救助任務に使う装備が中心」などと言って、「戦争目的の武器 ではない」というイメージ作りで国民を油断させた。ところが、いざふたを開けてみると、何のことはない。初の大型受注案件として浮上したのは、戦略的兵器 とされる最新鋭の潜水艦だったというわけだ。

その裏では、昨年10月に「防衛装備庁」が新設され、官民で開発した武器を海外に売る窓口ができた。また、武器輸出ビジネスに貿易保険が適用できるよう、政府内での調整も進んでいると聞く。もちろん、経産省や防衛省の官僚の天下り利権も拡大するから官僚達は大喜びだ。

以前、中東空爆によって、フランスの「ラファール」戦闘機がバカ売れしてフランス国民が大喜びしているという話を紹介した(’15年12月26日号)。そこには、自国の武器が他国の人々を殺傷しているという罪悪感はほとんど存在しない。

武器ビジネスがもたらす利益は巨額だ。その利益に目が眩み、他の武器輸出大国のように、日本も官民ともに人々が心のどこかで戦争や紛争が起きることを望むような国になってしまうのだろうか。そうなる前に、今一度立ちどまって考え直すべきだ。

現代ビジネス(2016年4月9日)より

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