『経産省「原発復活政策」の5年史』 古賀茂明氏-週刊プレイボーイ

F4lg03週刊プレイボーイ2016年3月21日号に掲載された、古賀茂明氏の『経産省「原発復活政策」の5年史』の書き起こしです。
 


週プレ20160321号 -1頁

週プレ20160321号 -2頁


「電力が足りない」「低コスト」「環境に優しい」
3.11から画策し続けた“原子力ムラ死守”の戦略

経産省「原発復活政策」の5年史

古賀政経塾!! 拡大版

昨年から再稼働が進む原発。「再稼働はしょうがない」という諦めが日本に漂うが、その裏には経産省が着々と進めてきた策略があった。脱原発を訴え続ける古賀茂明氏が古巣の“黒い5年史”をつまびらかにする!

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3.11当時、各所から「脱原発」が声高に叫ばれ、多くの人々が原発は少しずつその数を減らしてゆくだろうと予測したものだった。
ところがその予測は外れ、原発は次々と再稼働しようとしている。昨年8月、再稼働にこぎ着けた九電の川内(せんだい)原発に続き、今年も関電の高浜原発、四国電の伊方原発などが運転を再開する見込みだ。
なぜ、こんなことになったのか?その答えのひとつは、原発をなんとか維持したいと願う経済産業省(以下、経産省)の策略にある。同省が原発復活に向けて、どんな動きをしたのか、3.11から順を追って解説しよう。

2011年
「ひたすら黙る」

事故直後、経産省がまず考えたのは「原発廃止だけはなんとしてでも阻止すべし」ということだった。
そのためには、ひたすら黙ること。間違っても「原発再開」という言葉は口にしない。とにかく目立たず、出張らず、威張らず。損害賠償請求など、国民から要求があれば、すぐに善処を約束する。そうして時間を稼ぎ、原発事故への国民の怒りが和らぐのを待った。

2012年
「太陽光エネルギーを猛プッシュ」

次に経産省が着手したのは、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)をスタートさせることだった。
原発事故により、安全でクリーンな再生可能エネルギーへの関心が高まっていた。そこで経産省は12年7月1日より、電力会社に再生可能エネルギーによって発電された電気を、国が定める固定価格で買い取ることを義務づけたのである。特に太陽光は1kW時42円という高い価格が設定された。
当時、世界の太陽光電気の買取価格は1kW時20円台も普通だった。まさに大盤振る舞いである。
こうなると企業にとって太陽光は“打ち出の小槌(こづち)”だ。孫正義会長率いるソフトバンクがメガソーラー(大規模太陽光発電所)構想をぶち上げて発電事業に乗り出すなど、太陽光ビジネスは一挙に盛り上がった。経産省は、世間の目を原発から太陽光へそらすことに成功したのだ。

2014年①
「ベースロード電源に原発を置く」

だが、太陽光発電が定着してしまうと、原発は不要になりかねない。そこで経産省がそろそろと持ち出してきたのが「エネルギー基本計画」(14年4月)だった。この計画では、発電コストが安く、昼夜を問わず安定供給が期待できるという理由で「ベースロード電源」のひとつに原発を位置づけた。これで原発の生き残りが確定したのだ。
その際、経産省はあからさまなインチキをしている。「ベースロード電源」として地熱、水力、石炭火力、原発のみを挙げ、全発電量の43%を占めるLNG(液化天然ガス)による火力発電(14年実績)を省いてしまった。
「ベースロード電源」は総電力の6割と想定されており、もしそこに4割のシェアを持つLNGを入れてしまうと、水力や石炭火力と合わせて6割超えとなり、原発の出番がなくなる。経産省はその指摘を受けることを嫌ったのだ。

2014年②
「太陽光エネルギーのブーム衰退を待つ」

エネルギー基本計画の提出から約半年後の14年10月、九電はFITによる太陽光電力の買い取り申請の受付中止に踏み切った。理由は太陽光が増えすぎたため、全量を買うと九電の夏のピーク時需要1600万kWを大幅に超え、かえって電力の安定供給ができなくなるからだ。
実は経産省はこのトラブルをあらかじめ織り込み済みだった。太陽光発電を増やすだけ増やしておけば、いずれは供給過多になり、安定供給を理由に電力会社は買い取りできなくなる。そうなれば太陽光ビジネスが成立しなくなり、再生可能エネルギーブームに冷や水を浴びせることができると最初からわかっていたのだ。

2015年
「原発新設への布石を打つ」

経産省の仕掛けは続く。15年5月、今度は2030年時の望ましい電源構成「ベストミックス」案を公表した。その比率は【原子力20~22%】に対し、【再生可能エネルギー22~24%】。この数字だけを見れば、国は原発よりも再生可能エネルギーを重視しているように見える。だが、この“比率”が曲者(くせもの)だ。
原発の寿命は新設から40年までとされている(設備などを更新すれば20年の延長使用が可能になる場合も。)
そのため、今ある原発は老朽化で廃炉となり、2030年時点ではそのシェアは15%に低下すると予測される。なのに「ベストミックス」は20~22%。これではつじつまが合わない。
足りない5~7%分を確保するためには、老朽化した原発を設備更新して使い続けるか、新たに原発を造るしかない。
驚くことに、ベストミックスの裏には原発新設の可能性が見え隠れしていたのだ。しかも経産省は「エネルギー供給構造高度化法」を告示改正し、非化石電源比率(原子力プラス再生可能エネルギー)を44%にしようと狙っている。あえて44%の内訳は明らかにしないことによって、極端なことを言えば「原発が43%、再生可能エネルギーが1%」でもOKとなってしまう仕組みも導入しようとしている。

2016年
「“原発=クリーン”を再びアピール」

ここまで5つのフェーズに分けて、経産省の原発復活シナリオを見てきた。
その仕上げは今年5月の伊勢志摩サミットになると私はみている。経産省は議長国として安倍首相に極めて大胆なCO2削減目標を訴えさせるはずだ。
狙いは、CO2削減のスローガンを浸透させ、後に「サミットで公約したCO2削減のために原発を増やすのは仕方ない」という方向に世論を誘導する戦略だ。
3.11から5年。原発は減るどころか、エネルギー基本計画やエネルギー供給構造高度化法などによって、むしろその存在を法で守ろうとしている。
しかし、言うまでもなく原発は事故が起きれば国土に壊滅的なダメージを与えるリスクそのものだ。さらに、原発推進でこれからの有望産業である再生可能エネルギー産業の芽を摘み、成長を抑制してしまう。経産省の利権のためにデメリットだらけの「原発復活」の流れを許していいわけがない。

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