『ホンハイの郭台銘会長は“シャープのカルロス・ゴーン”となるのか?』古賀茂明氏―週プレNEWS

F4lg03ホンハイの郭台銘会長は“シャープのカルロス・ゴーン”となるのか?

週プレNEWS 2016年2月22日
 


世間に衝撃を与えた鴻海(ホンハイ)のシャープ買収報道。

『週刊プレイボーイ』でコラム「古賀政経塾!!」を連載中の経済産業省元幹部官僚・古賀茂明氏は、日本企業に足りない“経営者の質”に言及する。

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経営再建中のシャープが台湾の大手電子機器メーカー「鴻海」の全面支援を受けるとの見通しが強まっている。ホンハイの支援総額は7千億円。事実上の台湾資本による買収だ。

当初、シャープ再建は政府主導の官民ファンド・産業革新機構がリードしていた。

その再建案は、【1】主力銀行に3500億円の金融支援をのませた上で、革新機構が3千億円を出資して事実上の国有化、【2】シャープの液晶部門を ジャパンディスプレイ、白物家電部門を東芝と統合する─といった内容。シャープの液晶技術の海外流出を防ぐだけでなく、東芝も巻き込んで業界再編を官主導 で一気にやってしまおうというわけだ。

元経産官僚の半田力(つとむ)氏が取締役に天下りをしていることからもわかるように、シャープには政官と強い結びつきがある。「親方日の丸」には逆らうべくもなく、革新機構の再建案をのむことになるだろうと予想されていた。

しかし、土壇場になって、シャープはホンハイ案に傾いた。経営陣を動かしたのは、ホンハイの郭台銘(かくたいめい、英名テリー・ゴウ)会長だった。

1月下旬、郭会長と革新機構は、シャープ本社でそれぞれの再建案をプレゼンしたのだが、事実上の国有化などでシャープを実質解体させようとする革新 機構に対して、郭会長のプレゼンは、同社が生き残り、発展できる道筋を示していた。そして、社外取締役をはじめ多くの経営陣が「ホンハイの支援策がベ ター」と、高い評価を与えたのだ。

では、ホンハイはシャープの何に魅力を感じたのか。それは高い技術力であり、勤勉な労働者だ。郭会長が「40歳以下の社員はクビにしない」と宣言したように、ホンハイは同社の若い技術者のポテンシャルに希望を見いだしている。

ホンハイはスマートフォンや薄型テレビなどの電子機器を受託生産する「組み立てメーカー」で、業績の約50%を米アップル社に依存していた。しかし、それは“ホンハイの成長はアップル社次第”ということを意味する。

「iPhone」の販売が頭打ちになりつつある今、ホンハイは脱アップルを図り、独自技術での機器の開発と販売に乗り出す必要があった。2012年からシャープと資本業務提携をしたのは、いずれ同社をその担い手にするためだったのだ。

今後の注目は郭会長の手腕だ。彼が日産を再生させたカルロス・ゴーン社長のような働きができれば、シャープは再び世界的企業として復活を遂げるだろう。

最後に、思うことがある。日本企業は高い技術力と勤勉な労働者を擁(よう)しているのに、気づけば中国、台湾、韓国勢に追い上げられ、特にお家芸とされた電機ビジネスでは、液晶は韓国のサムスンやLG、白物家電は中国のハイアールなどの後塵(こうじん)を拝している。

なぜ、こんなに差がついてしまったのか?

その答えは“経営者の質”にあるような気がする。企業革新に余念がない郭会長を見ると、スピード感、リスクを取る大胆な決断力、世界のトップ経営者と丁々発止の交渉をする能力などにおいて、日本の経営者の多くは明らかに劣っている。

「労働者一流、経営者三流」という言葉が思い浮かぶ。日本の再生のためには、まず経営者の再生が必要なのではないだろうか。

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